相対的なボーディチッタ(周りの人たち、動物たちへ向ける思いやりの心)を鍛えるポイント2の最後のスローガンがこのスローガン10です...

Slogan 11
When the world is filled with evil, transform all mishaps into the path of bodhi.
世界が悪で満ちている時は、すべての不幸を菩提の道へと変換せよ


今回のスローガンから、ロジョンの7つあるポイントの3つ目に入ります。
 
 簡単に前回のスローガン10までを振り返ってみると、最初のポイント1であるスローガン1では「心の訓練の準備」についての指示があり、そして、スローガン2から10までは、思いやりの心である「ボーディ・チッタを育む」ためのポイント2が続きました。

 そして、今回のスローガン11を含めたスローガン15までのポイント3は、「人生で起こるあらゆる出来事を、心のトレーニングに持ち込む」ことを主眼に置いています。その最初のスローガンが、スローガン11『世界が悪で満ちている時は、すべての不幸を菩提の道へと変換せよ』です。

 これは、身の回りのさまざまな問題、例えばコロナの問題、経済問題、環境問題といった大きなテーマから、家族喧嘩、職場の人間関係などの身近なテーマまで、「人生で起こるあらゆる問題を、覚醒(Wakefulness)した心で向き合えるようにしましょう!」というものです。
 
 覚醒とは、自分が作り出してしまう思考のパターン、心の癖にはまって物事の解釈が歪んだり、見聞きをすることを取り漏らしたりする「心の鈍さ」から、目が覚めることを言います。心が覚醒するためには、日頃のメディテーションの訓練と日常ので心の動きに気が付く力が必要です。また、この覚醒の質に触れている時には、心はネガティブさから抜け、自分の心の柔らかさ、優しさも同時に感じ取ることがでかくます。これが思いやりの心であるボーディチッタの入り口になっていきます。

 私たちの日常にはいろいろな問題が常にあります。たとえ自分の期待通りの人生を歩んでいたとしても、日常には何かしらの問題や障害が常にあります。不安、イライラ、嫉妬、プライド、落ち着きのなさが常に起こるのが私たちの人生です。こうした問題の原因は、自分の心の臆病さ、卑怯さ、貧乏性、損得勘定などの、心の混乱、鈍さから生じます。

 このスローガン11は、人生で起こるあらゆる事に対して、過剰に焦ったり、過剰に騒いだり、過剰に不安になりやすい自分の慣れ親しんだ心のパターンを使わずに、落ち着きと、優しさや思いやり、そして寛やかによって対処する訓練をしなさいということです。

 また、人生の出来事に思いやりを持って向き合う為には、自分の「寛大さ」との関わりもとても重要になります。寛大であるということは、心が貧しくないことを言います。

 毎日のマインドフルネス・メディテーションの練習を通して、体と心をシンクロさせることで、自分の体が必要な機能が揃っていて、十分に足りている感覚を感じ、そしてその体と共にある心も十分に足りている、豊かな感覚も養う必要があります。(これに関しては、「Blog柔らかい瞑想」に細かく書いておきました。)

 この自分の豊かさを使って、トンレン・メディテーションを行うことで、自分達は際限なく災難を引き受け、自分の中にある良いものを人へ届けることができるという感覚が磨かれます。そしてその感覚が磨かれるほど、自分自身の豊かさや資源の豊富さに自信を持つようになっていきます。

 こうした日々のメディテーションの積み重ねによって、「常に貧しさを感じる必要など何もない!」ことが自然にわかり始めます。また、「自分の周りに何があっても対応できる」という気持ちにもなっていきます。心の豊かさを実感できれば、人生の細かな部分に怯える必要もなくなり、人生全般をもっと大きな、広い視野で眺める力もついてきます。

 何事も自分の心の豊かさと共に進めればいいだけなのだとわかれば、人に何かを与えても、常に何かを受け取る必要はなく、何かを与えるために「成功」する必要はなく、何ごとも執着せず手放すことができるようになっていきます。

 このスローガン11は、毎日のメディテーションの実践と、規律ある日常を過ごすことで養われる寛大な心、忍耐のある心を持つことができれば、『全ての災難や問題は、蒙昧さから目覚めた心に転換することができるよ!』という可能性を私たちに伝え、勇気づけてくれるとても力強いスローガンでもあるのです。

河津祐貴
True Nature Meditation
Founder / Program Director