How do you feel?
Dec 07, 2024私は瞑想の指導者として活動しながら、チョギャム・トゥルンパ・リンポチェがアメリカで広めた瞑想を学ぶ生徒でもあります。彼の功績は多岐にわたりますが、特に重要なのは、チベット仏教のカギュ派タントラに基づいた「ヴァジラダトゥ」と、宗教に依らず誰もが瞑想を日常生活に活用できる「シャンバラ・ティーチング」を確立した点です。これらの体系は、欧米の文化や生活スタイルに合わせて構築されており、現代の私たちにも深い実践の機会を与えてくれます。
私はここ数年、特にヴァジラダトゥの実践に専念し、数年間にわたりヌンドロからヴァジラヨギーニのトランスミッションまで進みました。これらの練習が一区切りついた後、シャンバラの実践に本格的に取り組もうと考えていた矢先、ちょうどアメリカでトレーニングプログラムが始まると聞き、すぐに参加を決めました。
今回のトレーニングで指導を担当してくれたのはエレン・コーマン・メインズ先生でした。彼女はトゥルンパ・リンポチェから直接指導を受けたシニア・ティーチャーであり、40年以上にわたりシャンバラの教えを広めています。また、柴田勘十郎先生に弓道を学び、ナローパ大学でその指導を続けるなど、多方面での経験を持つ方です。私のメインティーチャーであるデイビッドやラリーからも「エレンは素晴らしい先生だから」と強く勧められたことが、参加の大きな後押しとなりました。
実際にトレーニングを受けてみると、彼女がクラス中に繰り返し「How do you feel?(どう感じる?)」と問いかけてくるのがとても印象的でした。この言葉は、理論の説明や瞑想の後、さらにはプログラム全体の終わりにも必ず付け加えられます。実はこのフレーズは私にとっても馴染み深いものでした。デイビッドがこれまで20年以上にわたり、日常や厳しい局面で「Suke, how do you feel?」と問いかけ続けてきた言葉だったからです。
今回、この言葉を改めて別の先生から聞くことで、「How do you feel?」という問いが瞑想の実践そのものを象徴していることを、改めて実感しました。
瞑想の実践とは、シャマタを通じてマインドフルネスを培い、その延長として生じるアウェアネスを活用し、ヴィパッシャナを深めて洞察を養うものです。そしてこの洞察力が、自分自身や環境に目を向け、日常生活を豊かに、より適切に過ごす力を与えてくれます。そう考えると、「How do you feel?」という言葉は、私たちの瞑想の道を指し示すキーワードそのものです。
しかし、日常生活では意外とこの「問い」を自分に投げかけることを忘れがちです。たとえば、仕事や家庭内でトラブルに直面した時、過去の記憶や未来への不安にとらわれ、目の前の状況や自分の感覚に気づけなくなってしまうことが多いのではないでしょうか。また、怒りや不安といったネガティブな感情に支配されている場合でも、それらの本質や質感に向き合えているかは疑問が残ります。瞑想は、こうした感情の背後にある原因や詳細に触れるための力を養います。
さらに、瞑想の力は、日常の微細な感覚にも目を向けさせてくれます。たとえば、コーヒーを飲む時に感じる香りや温度、カップの触感や陶器の肌触りなど、日常の些細な瞬間に潜む豊かさに気づくことができるのです。瞑想とは、こうした感覚を通じて人生の瞬間瞬間を深く味わう力を与えてくれるものです。
「How do you feel?」という問いは、私たちの瞑想実践を正しい方向に導いてくれるマジックワードであり、人生を彩る鍵でもあるのです。