オープン・アウェアネス

Dec 20, 2024

 最近、日本でも「アウェアネス」や「オープン・アウェアネス」という言葉を目にする機会が増えてきました。アウェアネス(Awareness)は「気づき」や「意識」と訳されます。サンスクリット語では「ヴィパシャナ(Vipashyana)」、チベット語では「ラクトン(lhakthong)」と呼ばれ、いずれも本来の意味は「特別な方法で見る」というものです。

 瞑想を続けることで現れる効果はさまざまですが、日常生活において最も重要とされるのが、このアウェアネスです。私が実践しているチベット瞑想の伝統では、アウェアネスによって6つのことが「発見」できるとされ、これらが日常に非常に役立ちます。

アウェアネスによる6つの発見

  1.  言葉の力を発見する
    瞑想を通じて、言葉の本当の意味を理解し、言葉が持つ力を正確に使えるようになります。その結果、コミュニケーションが明確になり、自分の考えを伝える力が高まります。
  2.  自分の内面と外の環境の違いを発見する
    自分の感情や内面の状態と、外の世界の状況を区別する力が育ちます。これにより、リラックスした心で周囲の出来事を受け入れられるようになります。
  3.  知覚の仕組みを発見する
    私たちの思考や感情がどのように生まれるのかを見つめることで、物事を深く理解する力が育ちます。他者の行動や自分自身の考え方をより柔軟に捉えられるようになります。
  4.  選択する力を発見する
    何が自分にとって必要で、何が不要かを見極める力を得ます。日々の選択において余計な迷いが減り、直感的に適切な行動ができるようになります。
  5.  時間をクリアに発見する
    過去、現在、未来をはっきりと区別し、「今この瞬間」の大切さを学びます。過去の後悔や未来への不安に囚われず、今自分がすべきことが明確になります。
  6.  知識とカルマの法則を発見する
    カルマ(因果の法則)や自然の仕組みを深く理解することで、私たちが生きている世界、その基本原理、そしてそれが心理的にどう機能するかを根本的に理解できるようになります。この洞察が、心の混乱を解消するための重要な鍵になります。

リラックスを超えた洞察

 瞑想は、単なるリラクゼーションだと思われがちですが、実際には私たちの洞察力を研ぎ澄まし、日常の詳細なことを「よく見る」力を育てます。この「よく見る」ことで、特定の思い込みにとらわれない、開かれた心で日常に取り組めるようになるのです。

 もちろん、マインドフルネス瞑想などは「心を休ませる瞑想」と呼ばれるように、心も体もリラックスさせてくれます。実際に、マインドフルネスを実践するだけでも、自律神経が整い、血圧や血糖値が安定し、ストレスの軽減や睡眠の改善といった効果があります。こうした理由から、マインドフルネスは世界中で広がりを見せています。

 しかし、伝統的な瞑想実践の観点から見ると、マインドフルネスの最も重要な効果は「アウェアネス」を生み出すことだと言えるかもしれません。

 アウェアネスとは「よく見る」ことです。この「よく見える」とはどういうことかについて、私はクラスでスノードームを使って説明することがあります。

 たとえば、サンタクロースやトナカイが中にいるスノードームを振ると、雪が舞い、彼らがよく見えなくなります。この状態は、私たちの心が思考や感情で散漫になっていることを表しています。

しかし、スノードームをテーブルに置いてしばらく静かにしておくと、舞っていた雪が沈み、サンタクロースやトナカイがはっきりと見えるようになります。アウェアネスとは、まさにこのように心が鎮静化し、クリアに物事が見える状態を指します。そして、この静かな心を育むのがマインドフルネスの役割です。

 

瞑想の目的とオープン・アウェアネスの意義

 私の先生であるデイビッドは、「瞑想とは突き詰めれば、落ち着きと気づきを養う技術だ」とよく言います。マインドフルネスで心が落ち着けば、心のクリアな視界が広がり、日常をより正確に見る力が得られます。

 「瞑想は何のためにするのか?」と問われれば、それは「世界と関わり、日常を豊かに過ごすため」と答えられるでしょう。自分が生きている状況と直接関わるためには、このアウェアネス、すなわち世界をクリアに見る「眼」が必要です。そして、この「眼」を育むためには、マインドフルネスによる心の鎮静が欠かせません。

 私たちの瞑想のプラクティスでは、マインドフルネスとアウェアネスの両方の発達を目指しています。「落ち着く」と「気づく」を両立することで、日常をより正確に詳細に見る力を培います。思い込みや決めつけなどを手放し、心をオープンにして、偏見なく他者や状況と向き合い、日々の出来事に素直に気づき、触れていきます。

 オープンであることとアウェアネスは切り離せません。偏りなく世界を観察し、物事をそのまま受け入れることで、アウェアネスの力が一層発揮されます。その結果、世界が鮮やかで豊かで、何も欠けていないことに自然に気づいていくのです。瞑想が日常を豊かにするとは、こうしたことを指しているのです。

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