椅子の瞑想
Jan 17, 2025瞑想といえば、足を組んで床に座る姿勢を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は椅子を使った瞑想も一般的で、特別なものではありません。私がこれまでトレーニングをしてきたノバスコシアやボルダーでは、参加者の約半数が椅子で瞑想していました。
デイビッドやラリーなどの先生方も椅子を使用することがあり、私自身も体調や会場の環境に応じて床や椅子を使い分けています。特に私たちの伝統では、瞑想中に身体の寛ぎを重視するため、足を組まない座法や椅子を使った姿勢がよく用いられています。
瞑想姿勢の歴史
ブディズム・メディテーション(仏教瞑想)がインドからチベット、中国、日本、東南アジア諸国に広がるにつれ、単に足を組んで床や地面に座るだけではなく、地域や身体的制約に応じた多様な姿勢が採用されてきました。椅子に座る姿勢もそうした歴史の中で発展してきたもので、特に身体的な理由や老齢によって床に座ることが難しい人々にとって理想的な代替案となりました。こうした背景は、瞑想姿勢が特定の形式に限定されるものではないことを示しています。
椅子での瞑想姿勢の語源
椅子での瞑想姿勢は、古来から「マイトレーヤアーサナ(弥勒座)」として知られています。マイトレーヤ(弥勒)は、サンスクリット語の「マイトリ」(英語では Loving-kindness)に由来しており、日本語では「慈愛」と訳されます。この言葉は「優しく平穏な様」を表し、弥勒菩薩が慈悲や平和を象徴する存在であることを反映しています。そのため、椅子での瞑想姿勢は慈悲(コンパッション)と平和(ピース)を強調した姿勢とも言われています。
椅子での瞑想姿勢の利点
椅子での瞑想姿勢は、床に座る蓮華座や安楽座に比べて身体的な負担が少なく、年齢や体力に関係なく誰でも取り組むことができます。長時間の瞑想中も姿勢を維持しやすく、初心者でも負担を感じずにリラックスして取り組むことが可能です。また、床に座る姿勢より背筋を伸ばしやすいため、身体の自然な呼吸を感じやすくなります。このことから古来より「身体の調整、呼吸の調整、心の調整」を一体化するための効果的な姿勢とされています。
椅子での姿勢の取り方
椅子での瞑想姿勢では、以下のポイントを意識しましょう。
- 座面に浅く腰掛ける
お尻は座面の1/3から1/2ほど腰掛け、深く座りすぎないようにします。 - 足を接地させる
足の裏を床にしっかりと接地させます。椅子が高い場合は、座布団やマットを敷いて調整しましょう。 - 腿を床と並行に保つ
椅子の高さを調整し、腿が床と並行、または膝に向かって少し下がる程度にします。膝が腰よりも高いと背骨が丸まりやすいため、お尻の下に座布団を敷いて高さを調整してください。 - 背筋を伸ばす
背骨が自然に起きた状態を保ちます。猫背にならないようにし、背もたれや肘掛けは使用しません。 - 手は膝または腿の上
手のひらを下向きにして膝や腿に軽く置きます。 - 目は開けて視線を前方に落とす
目を開けて、約3メートル先の床に視線を置きます。半眼でも構いませんが、自然に目を開けた状態が理想的です。 - 無理のない姿勢を保つ
身体が緊張している場合は、息を吐きながら姿勢を調整し、リラックスして座ります。力みすぎないよう注意してください。
椅子の選び方
安定した瞑想姿勢を保つために、以下のような椅子を選ぶと良いでしょう。
- 座面が床に対して水平、またはわずかに傾斜し、硬すぎず柔らかすぎないもの
- 高さが足裏を床に接地させ、腿が床と並行になるもの
- 動かない脚の椅子(ホイール付きの場合はロックが可能なもの)
- 背もたれや肘掛けがあっても問題ありませんが、瞑想中は使用しない
木製のダイニングチェアやスツール、幅のあるベンチがおすすめです。一方、ソファは体が沈み、姿勢を保ちにくいためおすすめできません。
瞑想姿勢の基本
瞑想の基本は、背筋が伸び、胸が柔らかく開いた姿勢で座ることです。この基本が守られていれば、椅子でも胡座でも正座でも問題ありません。また、身体がリラックスしていることが重要です。日頃の瞑想でどこかに力が入りすぎていると感じたら、他の座り方にも挑戦してみましょう。座り方を変えることで、新しい感覚が得られるでしょう。瞑想は、心も体も固まらず、自由で柔軟であることが大切です。柔軟な心と姿勢を大切にし、瞑想の可能性を広げていきましょう。