あらゆる責めを一つに追い込む / スローガン12
Apr 12, 2022Slogan 12
Drive all blames into one.
あらゆる責めを一つに追い込む
今回のスローガンは、「物事の責任や非難を全て自分で負うようにする」というもの。自分の責任であろうと、自分に責任がなかろうと、全部まとめて自分が責を追うようにしていくトレーニングです。
日頃、私たちは、何か問題が起こるとすぐに人のせいにしがちです。会社の問題であれ、家庭内の問題であれ、自分の人生についてであれ、他の誰かのせいで問題が生じていると思いがちです。そして、自分に問題はなく、非難されるようなことは一切ないと信じて疑いません。
しかし、残念ながら、実は全ての問題は自分自身が引き起こしています。全ての責任は、自分自身にあります。人生で起こる全ての災難は、よくよく見てみると自分の仕業なのです。
家族や友人、上司や部下、天気や世界経済や、ひょっとしたら自分の愛犬でも何事にも責任を擦りつけることができますが、物事に過剰に執着して手放せないのは私たち自身ですし、思いやりや暖かさを十分に育んでいないのも私たち自身です。他の誰かを責めたりはできません。
コーヒーが冷めるのも私のせいですし、愛犬ルンタが廊下にうんちをしてしまっても私のせいにする練習をしていきます。このスローガンの意図するところは、全ての問題は自分のエゴ(自我)に固執することが原因であるということです。全ての責任を自分に押し付けなければならない理由は、自分の大切にしすぎる私たちの癖を止めるためです。
私たちは自分が大切です。自分が嫌いという人もいるかもしれませんが、しかしそれは単なる口先だけの言葉です。私たちは自分を守るためには他者を犠牲にしても厭わないのです。これこそエゴのシステムが普通に機能している私たちなのです。
自分が問題を起こしても、自分ではなく周りの人たちが失敗をしても、等しく全て責任を自分がとることは、とても効果的にエゴのシステムと向き合うことができます。
また、全ての責任を自分に向けていくことは、問題のある状況をコントロールして、好転させていく、最もシンプルでダイレクトな方法でもあります。さまざまな混乱を単純化すつことができる可能性に富んでいるのです。
例えば、職場で何かのトラブルがあったら、一旦全ての問題を『私の責任です!』と言ってみましょう。それが自分のせいではなくてもです。すると、周囲の関係者たちも、自己防衛的な心が和らぎ、話をしやすくなります。もしかしたら問題の原因となっている相手が、自分の悪いところや問題を認識できるかもしれません。このように責任を私たち自身が引き受ける時、そこには心理的・空間的な余裕を生み出すことができ、問題や人間関係の混乱や障害を単純化することができるのです。
自分だけなく、周りの人の不安や恐怖や混乱といった神経症を減らして、みんながより明晰で優しくいられる余裕を、私たち自身が積極的に作ることができるのです。これこそMahayana(大乗)のトレーニングの本質と言えるかもしれません。
このスローガンを実践し始めるときは、とにかくトレーニングとして非難や責任を自分が引きうけて行こうと、それによって心を鍛えるぞ!とただスローガンの指示に従うだけかもしれません。
しかし、スローガンの実践に加えて、マインドフルネスとアウェアネスのメディテーションを続けていくことで、しっかりと洞察力が磨かれてくると、誰かを非難したり、責任を負わせたりすると、自分も周りの人も心の混乱して、攻撃性が上がるのがわかるようになります。これが感じ取れるようになれば、非難や責任を引き受けることはとても合理的で、論理的な行為であることがわかるようになっていくきます。
あらゆる非難、責任を引き受けることはとても強力な呪文を唱えるようなもので、物事全てが機能し始めます。自分が毒を引き受けることで、残りの状況は薬に変わるのです。