読むロジョン / スローガン17

トンレン瞑想 ロジョン Apr 12, 2022
読むロジョン / スローガン17

Slogan 17
Practice the five strengths, the condensed heart instructions.
五つの強さをプラクティスする、凝縮された心の指針。


 今回のスローガン17から、ロジョンの7つのポイントの4つ目のポイントに入ります。ポイント4は「人生の中でプラクティスの活用を示す」ことを目的としたスローガンが続きます。今回はその最初のスローガンにあたります。

 スローガン中の「5つの強さ」とは、①固い決意、②慣れ親しみ、③徳の種、④非難、⑤強い願望を指し、この5つの力をロジョンのトレーニング、もう少し大きく捉えるとMahayanaのトレーニングを進む際に必要な力とされています。今回はこの5つの力をそれぞれ紹介していきます。

①固い決意

 まず最初の力は、固い決意を持つということです。
 このロジョンの目的である思いやりの心(ボーディ・チッタ)を磨く練習をしっかりと続けていくことを固く決意することを指します。朝、目が覚めてから夜寝るまで、ロジョンの実践、トンレンの実践を忘れることなく続けていきます。そして1日が終わって布団に入ったら、明日もしっかり練習を続けようと決意を固め直します。自分と日々の実践は常に一緒にあり、毎日の実践は自分のボーディ・チッタを培う大切な機会であることも認識し続けていくことです。

 この決意を固めることは、恋愛のようなものと言われます。誰かと恋に落ちた時、その人と片時も離れたくないと感じたことがあるかと思いますが、この固い決意とは、毎日の瞑想やロジョンの実践に惚れ込んでしまうのです。そうなれば、毎日の実践に苦痛や困難はありません。恋人と過ごす時間のように感謝と喜びを感じるようになるでしょう。

 しかし時には、瞑想をしたくない、ロジョンカードを見たくないという時もあるでしょう。人生の状況の変化や毎日の体調の変化によってそうした波があるものです。そうした時は、しっかり努力を続けられるように、この決意を忘れないようにします。大変そうに思うかもしれませんが、固い決意を持つとき、そこにはベーシック・グッドネスやアラヤの自然さがあるので、かえって心はリラックスしていきます。自分がいつもの神経症的な心的パターンに囚われずに、目が覚めてスッキリした感覚のように、自分が正しい場所、正しい実践をしていることを感じて、練習うを続けていく気持ちが湧いてくるものです。

 

②慣れ親しむ

 2つ目の力の「慣れ親しむ」とは、日々の瞑想の実施やロジョンの実践が身近で自然なものになるとことです。ふっと何かしらの想いに囚われてマインドレスになった時に、自然に自分の規律や、いつもの練習の感覚が思い出されるほどに慣れていきます。この慣れていく過程で、私たちが得意な、いつもの頭の中でのゴシップや、散漫で混乱した思考に気がついたら、ダルマ的な思考に切り替えるようにしていきます。

 ダルマ的とは例えば、無常や四諦やもちろんボーディ・チッタのことなどを自分が考えいる時を想像してみてください。そうした時には私ちの心は攻撃的になってイライラいしたり、何かに過度に執着したり、ぼーっとして何かがわからなといった感じにはなっていないことに気がつくと思います。ダルマに触れている時には心は比較的安定していますので、自分の心が動揺している時には、こちらに思考の対象を切り替えるのです。チャンティングなどをするのは、これが理由の一つです。詠唱している時には、少なくとも自分の攻撃性は起こりませんし、過度な執着や無関心は中断されます。また、瞑想中に心が散漫であったならば、シンプルに呼吸に意識を向けてマインドフルネスに立ち帰ることも大切です。

 慣れ親しむとは、「ダルマを異質なものと見なさいこと」とも言い表すことができます。ダルマとはブッダの伝えたことという意味合いだけではなく、現象とか物事の成り立ち、システムということも含んだ言葉です。そうした理解があれば、日常の全てのことからダルマを想起できるようになります。コーヒーをいれるダルマ、自転車を乗るためのダルマ、料理のダルマなどなど、何かをする時にダルマを思い出すことができます。簡単ではありませんが、こうしたことに慣れていくと、自分の正気は自分の存在の一部であることが自然にわかりはじめます。自分の散漫さ、相反する感情、落ち着きのなさ、イライラは、徐々に自分の落ち着きとマインドフルな感覚、さらにははっきりと覚醒して「今にいる」感覚が磨かれ、自分の思いやりの心であるボーディ・チッタイにも触れ慣れていきます。

③徳の種

 三つの目の強さは「徳の種」です。この場合の徳とは、私たち自身の体、心、そして言葉(話し方)がボーディ・チッタを広めるために捧げられていることを意味ます。これだとちょっとわからない方は、心の健全さとか正気さとして考えてみてください。徳というのはそうした健全で覚醒していて、正気でいられる状態を指す場合もあります。

 この徳の種があれば、マインドフルでいる感覚、混乱した心の白昼夢から目が覚めている感覚を維持することに抵抗がなくなります。自分がやっている瞑想やロジョンの実践が楽しいものと感じ、元のマインドレスな状態に戻りそうになったらまた種を蒔き続け、正気を維持するようにしていくことができます。自分の日々の練習に満足して、決してサボらないようにします。

④非難

 4つ目の強さは、自分のエゴ(自我)を「非難」することです。自分のエゴに対して、『エゴよ、あなたはこれまで私に多大な迷惑をかけてきたので、大嫌いです!私はあなたをなくしていきます。』と言うことです。このように自分のエゴに対して語りかけることは、ときには非常に役立つと言われています。洗い物をしていたり、シャワーを浴びていたりするときに自分のエゴに語りかけ、エゴを非難をしていきます。こうしたことがMahayanaのトレーニングを実践する人になると言うことでもあります。

⑤強い願望

 日頃の瞑想や、ロジョンの実践を通して磨かれる感覚や重要性がわかってくると、毎日の練習が全く重荷にならなくなります。そうなるとさらに心のトレーニングを続けて深めていきたいと思うようになります。また、ボーディ・チッタにも触れることを繰り返すことで、自分の優しさ・思いやりの可能生もしっかりと自覚できるようになります。そしてその結果、どんな時でもどんな状況であっても、周りの人たちや動物たちを大切にしたいと感じるようになっていきます。世界の助けるためにどんなことでも喜んで取り組めるようになります。これがマハヤナの実践者であるマハヤニストとか菩薩やボーディサッタと呼ばれる人になるための誓い(菩薩戒)の基本的な考え方です。つまり世界中の生きとし生けるものが、心の混乱から解放されるために、自分自身を彼らの作業場所として提供することを願うことが、5つ目の強さである「強い願望」と呼ばれるものです。

 こうした願望を実践するため、毎日の瞑想の練習を終える時に、毎回以下の3つの願望を思い出すことが重要です。

①自分ひとりで生きとし生けるものを救うこと。
②2つのボーディ・チッタを夢の中でも忘れないこと。
③どんな混乱や苦難が起きてもボーデイ・チッタを忘れず共にあること。

 以上が5つの強みと呼ばれるものです。
 ロジョンのトレーニングは、自分だけでなく周りの人たちも自分と同じように大切に扱い、思いやりを向け、困っていれば手を差し伸べるためのものです。マインドフルネスの実践も簡単ではありませんが、こうしたコンパッションのトレーニングはさらに大変です。5つの強みをしっかり鍛えることで、Mahayanaの道を進む力をつけていきます。思いやりはこうして鍛えられ、使えるようになるのです。

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