読むロジョン / スローガン18

トンレン瞑想 ロジョン Apr 12, 2022
読むロジョン / スローガン18

Slogan 18
The Mahayana instruction for ejection of consciousness at death
Is the five strengths: how you conduct yourself is important.

死に際しての意識放出についてのマハヤナ指示
それは5つの強さ:自分がどう振る舞うかが大切


 今回のスローガンは、『死』について。瞑想を実践して上でも、ロジョンで心を鍛える上でも、死について考えることはとても重要です。私たちは遅かれ早かれ必ず死んでしまいます。いつ死んでしまうかは単に時間の問題で、誰でも等しく必ず起こることです。

 このスローガンは、死を忌むべきものではなく、むしろ『死と友達になる』ことを指示しています。その死を身近なものにしていくのです。有神論的哲学または有神論的瞑想アプローチでは、永遠の何かを信じますが、ロジョンの理論の母体であるマハヤナ・ブディズムでは死は事実であると考えます。私たちは、生まれた以上、必ず死は訪れます。極めてシンプルな事実でありながら、私たちはこの事実から目を背けてしまう傾向にあります。

 なぜ死から目を背けてしまうのかといえば、死は恐ろしく、醜いものであり、悪い意味を持つものだと考えいることが原因です。私たちはまず死に対する固定した考えを捨てなければいけません。自分の死と関わることは、自分の人生とどう関わるかということです。死が必ず訪れることを自覚して、死について語り合ったり考えたりすることで死について新たな見方を培うことができますし、実際死と友達になることができます。

 私の瞑想の先生であるデイビッドは、以前から私に死ぬ間際をイメージする練習をさせています。例えば、布団に入って寝るときに、まず自分の呼吸がゆっくりと失われて死んでしまうイメージをします。それが最後の呼吸であるかのように、吐くいきが終わったら自分が失われるようなイメージです。最初はちょっと怖いかもしれませんが、練習していくと死が身近になっていきます。いずれ起こるであろう死の予行練習をすることで、死の言語を学んでいるようなものです。人生に対する大きな執着を手放す練習でもあります。

 また、死とが訪れた時にどうするかということだけを心配するのではなく、死はいつもそこにあることを理解することは大変重要です。仏教では全ての物事は必ず変化するという視点、すなわち無常という考えに基づいて自分や世界を眺めます。そうした視点からは死はいつもそこににあります。私たちの生命は泡のようなものです、いつ弾けるかはわかりませんが、必ずその泡はなくなります。このスローガンはそうした事実から目を背けず、私たちのトレーニングに取り入れていくことの重要性を指摘しているのです。

 さらにこのスローガンでは、前回のスローガン18で紹介した『5つの強さ』を私たちの死にも適用させることを指示しています。

 この場合の最初の力である『固い決意』とは、死にあたっても、エゴをすり減らし、自分の正気を保つために強い決意を持って臨むことです。絶対的なボーディチッタと相対的なボーディチッタにアクセスし続ける決意でもあります。2つ目の力の『習熟の力』、慣れ親しむことはマインドフルネスとアウェアネスを通して落ち着きと洞察する力を持つことで、死にさいしてもパニックを起こさないようにしていきます。3つの目の力『徳の種』とは、死の恐怖を避けて休息してしまうのではなく、瞑想実践や、ロジョンのトレーニングを中断しないことです。同時に自分の持ちものや、考えに執着してしまう癖を克服することでもあります。4つ目の『非難』する力は、自分のエゴが、実際には存在しないことを自覚することです。全ての問題はエゴに起因して、死はエゴによって引き起こされることを認識します。エゴに対する自信の反発を育てエゴを非難し続けます。最後の5つの目の『強い願望』の力とは、自分には大きな力があることを自覚して、自分が死に臨んだ時に後悔をしないように自分を解放し続けたいと思うことです。

 ロジョンの実践、瞑想の実践を続けることで、マインドフルネスとアウェアネス、すなわちシャマタとヴィパッサナの意味を理解し、ボーディチッタの意味を理解することで、死とも友達になることができるのです。

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