読むロジョン / スローガン9
Apr 12, 2022Slogan 9
In all activities, train with slogans.
全ての活動でスローガンを掲げてトレーニングする
今回のスローガンは、とてもシンプルです。毎日のメディテーションのトレーニングと、それ以外の日常(ポスト・メディテーション)の中で、常にスローガンを意識していくことを指示しているスローガンです。
今までの「ダルマを夢と見なさい!」とか「生まれてない意識を云々、、」というスローガンと異なり、とてもダイレクトで裏も面もないもので、とてもシンプルな表現で書かれていますが、実がこれが簡単な話ではありません。
そもそも、常にスローガンを意識できるためには、スローガンを忘れてしまっていたり、考えることがなければ進めません。そのためロジョンのスローガンを学ぶ時には、机や玄関など、常に目につくところにスローガン・カードを置いたり、スローガンを壁やドアなど生活動線の中に貼り付けて、常に目につくようにしていくことが一般的です。本を常に見返す癖がある方は、定期的にスローガンに目を通すのもいいかもしれません。
そしてスローガンを見たり、生活の中の出来事でスローガンに関することがあったときに、自分が受けた最初の印象を大切にすることが、ロジョンの実践ではとても重要です。チョギャム・トゥルパ・リンポチェは、よく『最初の思考、最高の思考』(First thought, best thought)という表現していますが、ロジョンでもこの最初の思考をキャッチすることが大事なポイントです。
パッと最初に湧き上がる最初の思考は、そこから伝言ゲームのように派生して連携していく第二、第三の思考とは違う性質があります。それはまだあまり自分の概念や、バイアスがかかっていない思考であり、まだ自分のエゴ(自我)であれこれ捏ねくり回す前の純粋さが残っているものだからです。それこそが本当に直感的に自分が感じたインプレッションなのです。この最初のひらめきを大切にすることは、物事をありのままに見るための第一歩になっていきます。
このように最初の思考はとても重要なのですが、これもなかなか簡単には捉えられません。この最初のひらめきを捉えることは、心が明晰であるとき、すなわちマインドフルネスでいなければできません。そしてマインドフルでいるためには、継続した毎日のマインドフルネス・メディテーションが欠かせません。ロジョンを実践するためにはこの毎日のメディテーションの実践が不可欠になります。
さらにロジョンを実践していく時にもう一つ忘れてはならないのは、ロジョンの基本的な目的は、「自他との転換」にあるという点です。スローガン7でトンレンを学びましたが、まさにトンレンの通り、自分があらゆるネガティブなものを引き受けて、周りの人達には自分の持っている全てのポジティブなものを渡していく心のパターンを鍛えるのがロジョンです。
もし、何かの出来事に直面しているときに、『私』が優先されていることに気が付いたら、すかさずそれを手放します。そんな時は、次の2つの言葉を考えてみてください。
[1] 私がすべての悪を受け取りますように、そして私の徳は他者に送られますように!
[2] 利益と勝利は他者に、敗北とデメリットは私に!
わざわざ声に出して言う必要はありませんが、こうした思考のプロセスに馴染むことが大切です。私たちは常に自分を優先します。それがエゴ(自我)の自然なプロセスです。そうした慣れ親しんだ、自動化された心のパターンに乗るのは簡単です。ロジョンはその全く反対の心のパターンに慣れていく作業です。
まずは、マインドフルネス「力」を培って、そこにロジョンのスローガンに慣れていくようにして、さらにトンレンの考え方を忘れず、良いものを吐き出し、悪いものを吸い込むことに慣れていくのです。これがロジョンを実践すると言うことです。簡単なことではありませんが、徐々に慣れていくことは難しくありません。
ロジョンは、1年、2年で何か達成したり、劇的な効果を求める、目的達成思考で行うものではありません。(メディテーション自体もそうだったりしますが、、)日常の中で、スローガンが自然に出てくるようになるまで、時間をかけて染み込ませていきます。今から10年後に気がついたらスローガンを誦じることができればOKくらいのゆったりとした歩みで進めれば、プレッシャーなく楽しんで進めることができると思います。
ゆっくり一歩一歩進めましょう!